「小学校でキャリア教育があると聞いたけれど、何をするの?」「小学生のうちから仕事のことを考えるのは早すぎない?」——子どもの学校生活の中で「キャリア教育」という言葉を目にして、疑問を感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。
小学校のキャリア教育は、将来の職業を早く決めるためのものではありません。子どもが自分の役割を果たしながら、自分らしく生きていくための土台となる力を、日々の学校生活や家庭での経験を通して育てていくものです。家庭での毎日の関わりも、キャリア教育の大切な一部になります。
この記事では、キャリア教育の意味、小学校から行う理由、育てたい4つの力、小学校で行われている内容、そして家庭でできる関わり方や気をつけたいことまで、順番にお伝えします。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| キャリア教育とは? | 社会で自立するための土台となる力を育てる教育 | 一人一人が社会的・職業的に自立していくために必要な、基盤となる能力や態度を育て、子どもの成長(キャリア発達)を促していく教育のことです。 |
| 小学校では何をする? | 係活動や職業調べなどで役割や働く意味を学ぶ | 係や当番の活動、身近な仕事を調べる学習、地域の大人との交流などを通して、自分の役割や、学ぶこと・働くことの意味を考えていきます。 |
| 家庭でできることは? | 家での役割を任せ、自分で決める経験を増やす | お手伝いや自分の持ち物の片づけなど、家の中での役割を任せ、日常の小さな選択を子どもに委ねることが、家庭でできるキャリア教育になります。 |
この記事でわかること
- キャリア教育の意味と、「キャリア」という言葉のとらえ方
- 小学校からキャリア教育を行う理由
- キャリア教育で育てたい4つの力
- 小学校のキャリア教育で行われている主な内容
- 家庭でできるキャリア教育と、学年別の関わり方
キャリア教育とは?
まずは、キャリア教育とはどのような教育なのか、その意味を確認しておきましょう。
キャリア教育の定義
キャリア教育とは、平成23年の中央教育審議会の答申で、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と示されています。
難しく聞こえるかもしれませんが、簡単にいえば、子どもが将来、社会の中で自分らしく生きていけるように、その土台となる力を少しずつ育てていく教育のことです。
「キャリア」は仕事だけを指すのではない
「キャリア」と聞くと、仕事の経歴や職業を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、キャリア教育でいう「キャリア」は、もっと広い意味を持っています。
人は、家庭では家族の一員として、学校では児童として、地域では住民としてなど、生涯の中でさまざまな役割を担いながら生きています。こうした役割を果たす中で、自分の役割の価値や、自分と役割との関係を見いだしていく積み重ねが「キャリア」です。つまり、小学生にとってのキャリアは、毎日の学校や家庭での役割を果たす経験そのものといえます。
職業教育との違い
キャリア教育とよく似た言葉に「職業教育」があります。職業教育は、特定の職業に就くために必要な知識や技能を身につける教育のことです。
一方、キャリア教育は、特定の職業に限らず、どんな道に進んでも必要になる基盤の力を育てる教育です。小学校のキャリア教育は、将来の職業を決めることが目的ではないという点を押さえておきましょう。
なぜ小学校からキャリア教育を行うのか
「小学生にキャリア教育はまだ早いのでは」と感じる方もいるかもしれません。ここでは、小学校からキャリア教育を行う理由を見ていきましょう。
変化の大きな時代を生きる力を育てるため
今の子どもたちが大人になるころには、技術の進歩や働き方の変化によって、社会の姿は大きく変わっていると予想されています。どんな変化があっても、自分で考え、周りの人と協力しながら、自分らしい生き方を選んでいける力が、これまで以上に求められています。
こうした力は、ある日突然身につくものではありません。小学生のうちから、日々の生活の中で少しずつ育てていくことが大切なのです。小学校の時期は、将来の進路を考えるための土台をつくる時期といえます。
学ぶことと将来のつながりを実感するため
「どうして勉強しなきゃいけないの?」と子どもに聞かれて、答えに困った経験はありませんか。今学んでいることが、将来の生活や仕事にどうつながっているのかを実感できると、子どもの学ぶ意欲は大きく変わります。
キャリア教育には、学ぶことと生きること・働くことを結びつけ、子どもが前向きに学校生活に取り組めるようにするという役割もあります。
学習指導要領でも重視されている
文部科学省「小学校キャリア教育の手引き」(令和4年3月)では、平成29年改訂の小学校学習指導要領において、「特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」が示されたことが紹介されています。
つまり、キャリア教育は特定の授業だけで行うものではなく、学級活動や各教科など、学校生活全体を通して行われるものとされています。小学校からの体系的なキャリア教育が、今の学校教育の大切な柱の一つになっているのです。
キャリア教育で育てる4つの力
キャリア教育では、社会的・職業的に自立するために必要な力として、「基礎的・汎用的能力」と呼ばれる4つの力を育てることが大切だとされています。それぞれの力を、小学生の毎日に置き換えて考えてみましょう。
人間関係形成・社会形成能力
さまざまな人の考えや立場を理解し、相手の意見を聞きながら自分の考えを伝え、協力して物事に取り組む力です。
小学生の場合は、友だちと仲よく遊ぶ、グループ活動で役割を分担する、家族と相談して決めるといった経験を通して育っていきます。意見がぶつかったときに、どうすればみんなが納得できるかを考える経験も大切です。
自己理解・自己管理能力
自分の得意なことや好きなことを知り、自分の気持ちや行動をコントロールしながら、やるべきことに取り組む力です。
宿題を自分で進める、時間を守る、自分の持ち物を管理する、気持ちを切り替えるといった日常の場面が、この力を育てる機会になります。自分のよいところを知り、自信を持つことも、この力の大切な一部です。
課題対応能力
困ったことや課題に出会ったときに、どうすればよいかを考え、計画を立てて解決していく力です。
忘れ物をしないための工夫を考える、うまくいかなかったことの原因を振り返って次に生かすといった経験が、この力につながります。親がすぐに答えを教えず、子ども自身に考えさせることがポイントです。
キャリアプランニング能力
学ぶことや働くことの意味を理解し、自分の将来について考えながら、目標に向かって取り組んでいく力です。
小学生では、「こんな大人になりたい」と思い描いたり、身近な大人の仕事に興味を持ったり、自分で目標を立てて頑張ったりする経験が、この力の芽を育てます。
小学校のキャリア教育で行われていること
小学校では、6年間を通して、学校生活のさまざまな場面でキャリア教育が行われています。主な内容を紹介します。
学年ごとに目指す姿がある
小学校のキャリア教育は、子どもの成長に合わせて段階的に進められます。一般的には、次のような流れで考えられています。
- 低学年:学校生活に慣れ、身の回りのことや自分の役割に取り組む
- 中学年:友だちと協力し、集団の中での自分の役割を果たす
- 高学年:自分のよさを生かし、将来や社会とのつながりを考える
最初から将来の職業を考えるのではなく、身近な生活の中での役割から、少しずつ社会へと視野を広げていくのが、小学校のキャリア教育の特徴です。
係活動や当番活動
クラスの係活動や給食当番、掃除当番などは、自分の役割を責任を持って果たし、みんなの役に立つ経験を積む大切な機会です。
「自分が係の仕事をすると、クラスのみんなが助かる」という実感は、働くことの意味を考える第一歩になります。自分で係を選んだり、係の仕事の進め方を工夫したりする経験も、自分で考えて行動する力を育てます。
身近な仕事を調べる学習や地域の人との交流
生活科や社会科、総合的な学習の時間などでは、家族や地域の人の仕事を調べたり、お店や施設を見学したり、働く人の話を聞いたりする学習が行われることがあります。
さまざまな仕事があることや、仕事が人々の暮らしを支えていることを知ることで、働くことへの関心が育っていきます。学校で調べた仕事について家庭で話題にすると、子どもの学びがさらに深まります。
教科の学習の中でも行われている
キャリア教育は、特別な授業だけで行われるわけではありません。国語で人に伝わる話し方を学ぶ、算数で筋道を立てて考える、理科で予想を立てて確かめるなど、各教科の学びの中にも、将来につながる力を育てる要素がたくさん含まれています。
日々の授業そのものが、キャリア教育の大切な一部になっているのです。家庭でも、学校で学んだことを生活の中で使う場面を見つけてあげましょう。
キャリア・パスポート
2020年度からは、小学校から高校までの学びや成長を記録して振り返る「キャリア・パスポート」の取り組みが始まっています。学年の始めに目標を立て、学期や学年の終わりに振り返ることで、自分の成長を実感できるよう工夫されています。
家庭でキャリア・パスポートを見せてもらったときは、子どもの頑張りや成長を一緒に喜んであげましょう。目標を達成できなかった場合も、挑戦したこと自体を認める声かけを意識してください。
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家庭でできるキャリア教育
キャリア教育は、学校だけで行われるものではありません。家庭での毎日の関わりも、子どものキャリア発達を支える大切な場です。特別なことをしなくても、日常の中でできることはたくさんあります。
家の中で「役割」を任せる
家庭でできるキャリア教育の第一歩は、子どもに家の中での役割を任せることです。お風呂掃除、洗濯物たたみ、食卓の準備、植物の水やりなど、子どもにできることを一つ決めて、継続して担当してもらいましょう。
「あなたがやってくれるから助かるよ」と伝えることで、子どもは家族の役に立っている実感を持てます。役割は親が一方的に決めるのではなく、子どもと相談して決めると、責任感を持って取り組みやすくなります。家族の役割分担を見える化する方法は、「家事分担表の作り方とコツ|名もなき家事まで見える化するテンプレート例つき」で紹介しています。
自分のことは自分でする習慣をつける
自分の持ち物を片づける、翌日の準備をする、時間割をそろえるなど、自分のことを自分でする習慣は、自己管理能力を育てる身近なきっかけになります。
特に片づけは、「残すか、手放すか」「どこにしまうか」を自分で考えて決める経験の連続です。子どもの片づけ習慣の身につけ方は、「子どもの片づけ習慣の身につけ方|親もイライラしない整理方法と声かけ」で紹介しています。
日常の小さな選択を子どもに委ねる
今日着る服、週末の過ごし方、おやつの選び方など、日常の小さなことを子どもに選んでもらう機会を増やしましょう。
自分で選び、その結果を受け止める経験の積み重ねが、将来、自分の進む道を自分で選べる力につながっていきます。子どもが選んだことが親の思いと違っても、危険がない限りは尊重してあげましょう。
働く姿を見せ、仕事の話をする
子どもにとって、最も身近な「働く大人」は家族です。「今日はこんな仕事をしたよ」「こんなことがうれしかった」など、仕事の話を子どもにわかる言葉で伝えてみましょう。
家事も立派な仕事です。家族のために料理や掃除をする姿を見せることも、働くことの意味を伝えることにつながります。仕事の大変さだけでなく、楽しさややりがいも伝えるように意識してみましょう。
地域の活動や体験に一緒に参加する
地域のお祭りや清掃活動、子ども向けの職業体験イベントなどに親子で参加することも、子どもが社会とのつながりを感じるよい機会です。
家族以外の大人と関わり、いろいろな人の働く姿にふれることで、子どもの興味や関心の幅が広がっていきます。
家族で目標を立て、振り返る
新学期や新年など区切りのよいタイミングで、家族それぞれが目標を立て、一定期間ごとに振り返るのもおすすめです。親も一緒に目標を立てることで、子どもにとってのよいお手本になります。
目標を書いて家族の見える場所に貼っておけば、お互いに応援し合うきっかけにもなります。達成できたら、家族みんなでお祝いするのもおすすめです。
失敗を責めず、一緒に振り返る
子どもが失敗したときは、責めるのではなく、「どうすればよかったと思う?」「次はどうしてみる?」と一緒に考えましょう。
失敗から学び、次に生かす経験は、課題対応能力を育てます。失敗しても大丈夫だと感じられることが、新しいことに挑戦する勇気にもつながります。親自身の失敗談を話してあげるのも、子どもが安心して挑戦できるきっかけになります。
頑張りを認める声かけをする
結果だけでなく、取り組んだ過程や頑張りを認める声かけを意識しましょう。「最後までやりきったね」「工夫していたね」と具体的に伝えることで、子どもは自分のよさに気づき、自信を持てるようになります。
子どもの意欲を遠ざけてしまう声かけについては、「親が言ってはいけない言葉とは?片づけ習慣を遠ざけるNG声かけと正しい伝え方」で紹介しています。
【学年別】家庭での関わり方のポイント
子どもの成長に合わせて、家庭での関わり方も少しずつ変えていきましょう。学年ごとのポイントを紹介します。ただし、成長には個人差があるため、目安として参考にしてください。
低学年:身の回りのことを自分でする
低学年は、着替えや持ち物の準備、おもちゃの片づけなど、身の回りのことを自分でできるようになることが大切な時期です。最初は親が一緒にやりながら、少しずつ任せる部分を増やしていきましょう。
簡単なお手伝いを頼み、「できたね」「ありがとう」と伝えることで、役に立つ喜びを感じられるようにします。片づけを何歳からどのように始めるかについては、「片づけは何歳から?子どもと一緒に部屋を整理する方法・習慣」で紹介しています。
中学年:家族の一員として役割を担う
中学年になったら、家の中で決まった役割を担当してもらい、責任を持って続ける経験を積みましょう。家族会議に参加して、家のルールを一緒に決めるのもおすすめです。
友だち関係が広がる時期でもあるので、学校や友だちの話をゆっくり聞く時間を大切にしましょう。自分の得意なことや好きなことに気づき始める時期でもあるので、興味を持ったことを応援してあげることも大切です。
高学年:自分で考え、計画して行動する
高学年になると、自分で考えて行動する力がぐっと育ってきます。宿題や習い事の予定を自分で管理する、自分の部屋やスペースを自分で整えるなど、任せる範囲を広げていきましょう。
将来の夢や興味のあることについて話をする機会も増えてきます。子ども部屋や自分のスペースを持つタイミングについては、「子ども部屋は何歳から?与えるタイミングの目安と判断のポイント」も参考にしてください。
家庭でのキャリア教育で気をつけたいこと
家庭でキャリア教育を意識するときに、気をつけたいポイントを紹介します。
将来の夢や職業を押しつけない
「この仕事が安定しているから」「親と同じ道に進んでほしい」と、親の考えを押しつけてしまうと、子どもは自分で考えて選ぶ機会を失ってしまいます。
小学生の夢は、成長とともにどんどん変わっていくものです。夢がころころ変わっても、それを否定せず、「どうしてそう思ったの?」と興味を持って聞いてあげましょう。夢がまだ見つからない子どもも、焦らず見守ることが大切です。
「将来の役に立つかどうか」だけで判断しない
子どもが夢中になっていることを、「そんなことをしても将来の役に立たない」と否定してしまうのは避けましょう。好きなことに夢中になる経験そのものが、自分を知り、意欲を育てる大切な機会です。一見遊びに見えることの中にも、集中力や工夫する力、人と協力する力など、将来につながる力がたくさん育っています。
きょうだいや友だちと比べない
「お兄ちゃんはもっとできたのに」「〇〇ちゃんはもう決めているのに」と、ほかの子と比べてしまうと、子どもは自信をなくしてしまいます。
成長のペースや興味の方向は、一人ひとり違って当然です。その子自身の小さな変化や成長に目を向けて、認めてあげることを大切にしましょう。
忙しい家庭こそ「仕組み」で支える
共働きなどで忙しい家庭では、子どもとじっくり関わる時間をとるのが難しいこともあるでしょう。だからこそ、子どもが自分で動ける家の仕組みを整え、家族それぞれが役割を持つことが大切です。
小学生の子育てと仕事の両立に悩んだときのヒントは、「小学生の子育て×フルタイムがきつい|つらさの理由と、無理なく続けるヒント」で紹介しています。
| 家族がチームになる暮らしを始めませんか 家族みんなで暮らしを整える経験は、子どもにとって「自分の役割を果たし、人の役に立つ」ことを学ぶ大切な機会です。大切なのは、ママだけが頑張るのではなく、家族みんなで家のことに取り組める仕組みづくりです。 サチアップ片づけ習慣化講座では、プロのトレーナーが伴走しながら、家族をワンチームにして片づけを習慣化していく45日間のカリキュラムをご用意しています。その家庭力アッププロジェクトの大事なエッセンスを3時間、オンラインで学べる機会もありますので、詳しくはお問い合わせください。 ▶ お問い合わせフォームはこちら |
まとめ
キャリア教育とは、一人一人が社会的・職業的に自立していくために必要な、基盤となる能力や態度を育てる教育です。小学校では、係活動や当番活動、身近な仕事を調べる学習、キャリア・パスポートなどを通して、自分の役割や学ぶこと・働くことの意味を考えていきます。
キャリア教育で育てたいのは、人と関わる力、自分を知り管理する力、課題に対応する力、将来を考える力の4つです。これらの力は、学校だけでなく、家庭での毎日の関わりの中でも育っていきます。
家の中で役割を任せる、自分のことは自分でする習慣をつける、小さな選択を委ねる、失敗を一緒に振り返るなど、日常の中でできることから取り入れてみましょう。家族みんなで暮らしを整える経験が、子どもが自分らしく生きていくための大きな力になります。
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